
ダンダンブエノという不思議な名前の劇団が、ここ数年、舞台好きの間で注目を集めてきた。固定メンバーは近藤芳正、山西惇、酒井敏也という、攻守どちらも自在に演じられる、実力派の役者3人。それ以外のキャスト、作家、演出家は公演ごとに決めるという外枠のユルさだが、観に行くと、坂東三津五郎が上下スウェットでダメ男を演じていたりする。つまり、かなり予測不能の舞台をつくっているのだ。また、作家と演出家の組み合わせが斬新だったり、まだメジャーではない作家を抜擢したりと、人選の目利きぶりが毎回、一目置かれている。そのセレクトを担当していたのが近藤だ。役者としての高い実力は知られるところだが、舞台のプロデューサーとしても優れた才能を持っていた。

「1回限りのはずがなぜか続けることになり、2001年からほぼ毎年、7本の舞台をつくりました。やってみてわかったんですけど、嫌いじゃないんです、裏方としてものをつくることが。もちろん、お客さんに楽しんでいただくことは大前提にありますけど、おおもとは“自分が観たい舞台をつくる”という気持ちから始まっていること。役者仲間からよく“大変でしょう、偉いね”と感心されるんですが、僕はいろんな作家さんに会って話をするのがちっとも苦じゃないし、単純に楽しいんですよ」
その話に深く納得してしまうのは、近藤が新たなユニットを立ち上げると聞いたから。その名も、「バンダラコンチャ」という。
「ネーミング、結構考えましたよ。ラコンチャは最初からあったんです。お芝居で函館のスペイン料理屋に行ったら、その店名がラコンチャだったんですね。その時の共演者の戸田恵子さんが“こんちゃん(近藤の愛称)と似てていいじゃない”って。そのときから“何かあったときに使おう”って頭の中に入れてたんですね。で、何をプラスしようかと考えたんですが、バンダってのはスペイン語でバンドという意味なんです。“こんちゃんバンドみたいな感じでいいな”と思って。ダンダンブエノもスペイン語が入ってるからつながりがあるし、ちょっと音楽っぽくていいか、と」
ダンダンブエノ番外編とせず、まったく違う団体名を付けたのは、
「僕の“観たい舞台をつくる”からスタートするという点では同じなんですが、ダンダンブエノでは酒井さん、山西さんに本当にお世話になっている。そのおふたりが参加しないなら、やっぱり名前ごと変えたほうがいいだろうと思って」
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気分も新たに踏み出す個人ユニット、その記念すべき旗揚げ公演のタイトルは『相思双愛』と付けた。“相愛”ではなく“双愛”なのがポイントだ。ひねったのはタイトルだけではない。男と女、生と死を巡るという共通点はあるものの、トーンや内容、書かれた時代も明らかに違う小説2編を戯曲化し、いくつかのパートに分けて交互に見せていくと言う。
「ラジオで横光利一さんの小説を朗読したときに“これを舞台にしたらおもしろいな”と思ったんです。でも短編なので、1本だけで上演するには短い。じゃあ、もうひとつ小説を探してきて2本立てにしよう、と」

自然な流れの企画ですよ、とばかりに話すが、演劇ファンだけではなく文学ファンなど幅広い層の興味を引く、ありそうでなかった好企画だ。そして、もう1本の小説を重松清の『四十回のまばたき』にしたり、脚本には小劇場出身の三十代の脚本家ふたりを起用するなど、普段から感度のいいアンテナを張っている人ならではの目配りとセンスが、やはり光る。『春は馬車に乗って』の倉持裕、『四十回のまばたき』の前川知大はどちらも、劇作家としては理系の感覚の持ち主。一筋縄では行かない、しかし深い愛をモチーフにした原作とどんな化学反応を起こすのか、興味は募る。
「若い人とばっかり組むね、とこれまた役者仲間からよく言われます。でも、たまたまなんですよ。自分と同世代や先輩の作家さんとも、いずれはぜひ舞台をつくってみたい。……ただ、どちらかと言うと僕は年下の人とのほうが話しやすいし、それに若い人のほうが、僕を立ててくれるからなぁ(笑)」
原作、脚本家のラインナップと同様に、坂井真紀、辺見えみり、榎木孝明という共演者にもこだわりがある。
「ちょっと変わった見せ方をする作品だし、それぞれの役もかなり演技力が必要だから、これは上手な人に出てもらわないとな、と思ったんですよ。女優さんに関しては脚本家の方とも相談しながら、イメージがぴったりのおふたりに出てもらえることになりました。榎木さんは、どちらの作品にも“外部からやって来る人”として登場します。そういうポジションなので、ルックスも演技のスタイルも僕とまったく違う方がいいだろう、と」
近藤は、坂井と辺見が演じる女性の相手役を演じる。
「バンダラコンチャもダンダンブエノと同じように、その時に僕がやりたいことを形にしていくユニットになると思います。だからこの先はコメディとか、いろんな作品が出てくるでしょう。でも今回は少人数で、男女の愛をじっくり描きます」
ダンス公演があったり、ミュージカル風の作品があったりと、たくさんの引き出しからアイディアを引っ張り出していたダンダンブエノ。しかし考えてみたら、しっとり、じっくり、愛と向き合ったことはなかったかもしれない。とすれば、近藤の頭の中にはまだまだやりたい企画があふれているのかも。
「また新しいユニットですか? ふふふ、そうですねぇ。あるかもしれないですよ」
近藤芳正(こんどう・よしまさ)
1961年生まれ、愛知県出身。テレビ・映画などで幅広く活躍する傍ら、三谷幸喜作品などに数多く出演を重ねる。最近の主な舞台作品は『ハイ!ミラクルズ』『歌わせたい男たち』『偏路』など。2001年から座長を務めている劇団ダンダンブエノの活動を一旦休止し、ソロユニット『バンダラコンチャ』を立ち上げた。






















